自分は無力で、何も出来ないと思った時は

森が燃えていました。動物達は

われ先にと逃げていきました。

でもクリキンディという名の

ハチドリだけは川と森をいったりきたり

口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは

火の上に落としていきます。


 

動物たちがそれを見て「そんなこと

をして何になるんだ」と笑います。

クリキンディはこう答えました

「私は私にできることをしているだけ」


 

出典:「ハチドリのひとしずく」

辻 信一監修 光文社刊 2005年


 

ーー


 

それを聞いた動物たちは、不思議

そうな顔をしてその場を立ち去って

行きました。クリキンディは、少し

悲しくなりましたが、それでも自分

たちの住む森を守りたいという一心で

熱い炎の上に水を落とし続けました。


 

だけれども、炎の勢いは増すばかり。

クリキンディやクリキンディの家族

や、一緒に住む動物たちの大切な森

は、どんどん燃えていきました。


 

クリキンディは熱さで意識が朦朧とし

羽も少しずつ、焼けはじめていました。

「もうダメか」と思った、その時です。

クリキンディの仲間のハチドリが一匹

「私も私にできることをする」と言って

一緒に水を運んでくれました。


 

それを見たライオンが、足で砂をかけ

熊が木をなぎ倒し、オランウータンが

水で濡らした木の枝を、炎に投げ入れ

そして、像の大群が鼻から大量の水を

吹きかけました。森の火は消えました。


 

動物たちは皆、怪我をしたり

毛が焼けたり泥だらけになりながら

クリキンディに笑って言いました。

「私も私にできることをしただけだよ」


 

ハチドリのひとしずく

その後のお話・二次創作

著 本気で夢を叶える会